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青い花の絵 食事療法の始め方
 
 
 
食事療法を始めるにあたって・・・
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食事とは、私たちが活動するためのエネルギーを得る手段です。
欠かすことの出来ない、生活の一部です。
 
食事療法を始めるということは、今までの生活を少しだけ変えていくことです。
これは今までの生活の中に「忘れずに薬を飲む」という行為が加わるのと同じように「食べるものは計る」という
行為を加えてあげることです。
 
薬物療法では飲み忘れがないように、目に付くところに薬を置いたり、飲んだ日時をメモしたり、工夫をするはずです。
食事療法も同じです。
 
 
 
まず、何からはじめたらよいのでしょうか?
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1.台所に計りを置くスペースを確保する
腎臓病の食事療法では、何より「計る」といった行為が欠かせません。
まず計りの置き場所を決めて、置きっ放しに出来るようにします。
(まな板の近く辺りが便利です)
常に計りがあれば、計ってみようという意識も沸きますし、より早く習慣付けることが出来ます。
 
2.ペンとノートはいつもそばに
はじめのうちは、とにかく口にしたものはすべて書き出す癖をつけましょう。
忘れないようにペンとノートを常に持っておいて、そのつど書きとめておきます。
慣れてきたら、可能な限り詳しく書くようにします。
何をどの位摂っているか、何が多くて、何が少ないのか把握することで、食事に対する認識を深めることが出来ます。
また、栄養指導を受けるとき、より具体的な相談が出来、的確なアドバイスを得られます。
検査データと照らし合わせることによって食事制限や内容を見直す材料にもなります。
 
 
 
食事療法の必需品
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・食品成分表(五訂増補 日本食品標準成分表 2007.1改訂)(女子栄養大出版)
・デジタル式の計り(1g単位(最小表示)で最大計量1s、もしくは2sまでのもの)
・計算機
・ペンとノート
 
 
 
あると大変便利なもの
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・計りに食材をのせるためのプラスチックなどの軽いお皿が数枚
(普通の陶器のお皿だと重すぎて計りの最大計測重量を超えてしまうことがあります。)
 
・ソースやタレをきれいにとるためのゴムベラ(出来れば耐熱性)
(味付けやカロリーが無駄になりません。腎臓食は薄味かつカロリー不足になりがちなのであると重宝します。)
 
・電子レンジとレンジ可能な容器
(少しでも手早く楽に作るためにも大いに活用できます。)
 
・パソコンと栄養計算ソフト
栄養計算ソフトには五訂食品標準成分表が組み込まれています。
食品名を入力するだけで食品が自動的に検索されます。
治療食品の100gあたりの栄養成分を入力し登録すると、もともと組み込まれているデータと同じように
使用することができます。
それら食品の量(g)を入力するだけでそれに応じた割合に栄養成分が表示されます。
食品単品の栄養成分はもちろん、おかず一品、食事一回分、一日トータルの栄養成分なども表示できます。
腎臓食で大切なエネルギー、たんぱく質、塩分などが簡単に計算できます。
栄養計算には高性能、高機能のパソコンは必要ありません。
栄養計算ソフトは各社より多数販売されています。(値段は1500円から3万円くらいです)
パソコンが使える方にはおすすめです。
 
 
 
献立作りに役立つことは?
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1.小分けにして冷凍ストックを作る
調理のたびに1から計るのではなく、前もって小分けにしておくという方法もあります。
肉や魚、低タンパクのご飯やでんぷん米など冷凍できるものはあらかじめ計って小分けにしてストックしておくと便利です。
 
2.タンパク質0gのお菓子を常備
腎臓病の食事療法でこわいのは、カロリー不足です。
そのため、普段から簡単にカロリーを補える得意な食べ物(出来ればタンパク質の無いもの)を見つけておくことも大切です。
例えば、ゼリーやジュース、春雨など。
特に治療用特殊食品の中から好きなお菓子などを常備しておくと計算がとても楽になります。
 
3.彩り豊かな献立づくり
献立を考えるときや盛り付けるとき、青(緑)、赤、黄色を意識してみましょう。
治療食だからといって、単調な味付けや色味のない食事になることはありません。
例えば、赤みが少ないメニューのときは、赤色の入ったお皿に盛り付けることで見た目補うことが出来ます。
目においしい食事は、からだにもおいしい食事になるのではないでしょうか。
 
 
 
献立の立て方(一例)
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まず、食べたいものを思い浮かべてみましょう。
材料を書き出します。
本や雑誌のレシピを参考にしても良いでしょう。
その中から、塩など省けるものは極力取り除いてみます。
下味の塩や野菜の塩茹でなどたいていいりません。
次に、1日の制限内に収まるように主食を変えたり、材料の分量を変えたり、全体のバランスを見ます。
良質のタンパク質が十分に摂れているか?
野菜は少なくないか?
そして何より、カロリーは足りているか?などです。
 
 
 
何をもとに食品の量を決め、計算するのでしょうか?
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食品成分表を見て決めます。
 
食品成分表には、食品100g当たりの各成分が明確に記されているため、正確に計算することが出来ます。
しかも、1800以上もの食品が掲載されているため、日常扱う食品のほとんどが分かるようになっています。
せっかく計るのであれば、正確なほうが良いでしょう。
何より、安心して食べることが出来ます。
 
腎臓病食品交換表というのもありますが、これは、食品を大きく6つの群に分け、タンパク質3gを1単位
として区切っており、四捨五入で計算したりするためかなりの誤差が出てしまいます。
 
 
 
食品成分表を見るときの注意点
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同じ食品の中でいくつか内容別になっているものもあります。
肉類では、最も多く流通していることから、豚肉は「大型種」を、鶏肉は「若鶏」の欄を見ます。
また、食品は基本的に“生”の値で計算し、“生”の状態で計ります。
ただし、ごはんは「水稲めし」の欄、つまり、炊き上がりの量で計算します。
 
 
 
揚げ物の油の量はどのように計算するのでしょうか?
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目安となる吸油率(素材が吸収する油の量の割合)から計算します。
素揚げ----------------------3〜8%
から揚げ--------------------6〜8%
フリッター・フライ---------10〜20%
天ぷら---------------------15〜25%
揚げる温度や時間、切り方などによって、多少の違いが出ます。
茄子は素揚げでも12%と吸油率は上がります。
また、春雨をそのまま揚げたときの吸油率は25%です。
 
 
 
腎臓病の食事では生野菜が食べられないでしょうか?
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カリウムは、野菜や果物だけに含まれるものではありません。
タンパク質と同様に、ご飯やパン、肉や魚、卵や豆腐、お茶、牛乳などあらゆる食品に含まれています。
 
例えば、トマト30gと豚肩ロース20gのカリウム量がほぼ同じだったり、バナナ30gと鮭30gの
カリウム量がほぼ同じだったり、いちごとヨーグルトのカリウム量が同じだったりします。
 
確かにカリウムを控えるためには、カリウムが水溶性であることから、茹でこぼして食べることはとても有効です。
(茹でることによって約1/3位溶け出します)
しかし、生野菜や果物を我慢して他の食品をたくさん食べていればカリウムを控えたことにはなりません。
 
1日に100g程度の生野菜や果物を食べることは可能です。
大切なのは1日のカリウム摂取量なのです。
 
ただし、アシドーシスであったり、カリウム制限のある場合には、カリウムを多く含む食品(芋や海藻類、
果物、乾物、ドライフルーツ、ナッツ類)や茹でても抜けにくい食品(ほうれん草、じゃがいもなど)に注意が必要です。
意外にもインスタントコーヒーやココアには特に多く含まれています。
 
 
 
では、なぜカリウムに気を付けなければならないのでしょうか?
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細胞内にあるカリウムは、細胞外にあるナトリウムを取り込んで腎臓からの排泄を促し、血圧を下げる作用を
します。(ナトリウム・カリウム・ポンプという細胞膜の浸透圧調節機能)
また、筋肉の収縮や心筋の収縮、腎臓の老廃物の排出を助ける働きをしています。
腎機能が低下すると腎臓から排出されず、血液中にたまり、高カリウム血症(不整脈、手足の痺れ、嘔吐、
下痢など)を引き起こします。
急激なカリウムの上昇は最悪心停止を招くこともあります。
 
 
 
腎不全になると、タンパク質と同様に「塩分も控えましょう」といわれます。
なぜでしょう?
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食品のパッケージで栄養成分の欄に「ナトリウム」というのを見たことはないでしょうか?これは、塩の
主成分である塩化ナトリウム(NaCl)のことです。
 
私たちは塩辛いものを食べるとのどが渇き、水がほしくなります。
 
塩を過剰に摂取すると、ナトリウムが血液中にたまります。
すると、腎臓は体内のナトリウム濃度を一定に保つために水分を引き寄せ、血液量が増えます。
結果、体に余分な水分がたまり、むくみが出ます。
水分で増えた大量の血液が血管を圧迫し、血圧が上がります。
毛細血管の塊のような腎臓にとっては、大変なダメージなのです。
 
例えば、肉や野菜に塩をまぶすと、中からの水分が出てきます。これは、塩に水を引き寄せる性質があるからで、
私たちの体の中でも同じことが起きているわけです。
 
 
 
塩分を控えるには、どうしたら良いのでしょうか?
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1.おかずのタレやソースなどはつけながら食べるようにしてみましょう
調理の際に通常の作り方通り、塩などを先に混ぜてしまうと、実際食べるときには、塩分を感じにくくなってしまいます。
しょうゆやタレなどは小皿に計っておいて、食べるときにつけながら食べると意外に塩分を感じ、わずかな量でも
おいしく食べられます。
 
0.5gずつパックになった塩や5gずつパックになった減塩しょうゆやソースなどを使うと便利です。
通信販売や病院で購入できます。
 
2.お酢やスパイスを上手く利用しましょう
酢やレモン、こしょうや唐辛子などの香辛料は腎臓には無害なので、味にアクセントをつける意味では大いに利用できます。
 
 
 
まぎらわしい調味料表示に注意しましょう
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1.「減塩〇〇」と表記されている食品を選びましょう
「減塩〇〇」という食品は「塩分控えめ」や「甘塩」という食品とは違います。
 
「減塩〇〇」とは、通常のその食品に比べて塩分が50%以下のものに限って表示できるものです。
これは、医学的に50%以下でないと減塩効果が得られないと厚生省で決められたためです。
よく見かける「塩分控えめ」とか、「甘塩」というのはそこまで塩分を減らされていないため注意が必要です。
 
2.「減塩塩」「無塩しょうゆ」と表記された調味料は、まず、使わない方が良いでしょう
これらの調味料は塩の成分が通常の塩化ナトリウムではなく、塩化カリウムが使われている場合があります。
腎臓に問題のない、高血圧の人にとってはとても有効だと思われますが、腎機能が低下した人にとっては
異常なカリウム摂取になってしまい、大変危険なのです。
 
食品のパッケージの栄養成分の欄によく「ナトリウム」と書かれているのは、ナトリウムが高血圧の要因として
重視されているためです。
 
 
 
食品の栄養成分に「ナトリウム」とありますが、塩分はどのように計算するのでしょう?
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ナトリウム(r)×2.54÷1000=食塩相当量(g)で求められます。
 
今まで慣れ親しんだ味を、ある日を境にガラリと変えることは容易なことではないかもしれません。
しかし、続けていくうちに必ず慣れてきます。
不思議なもので、少しずつ味付けを濃くしていくと、舌はどこまでも濃い味に慣れてしまいます。
逆に、薄味にしていくと、味に敏感になり、確実に薄味に慣れるのです。
 
 
 
家族と一緒におかずを作るとき、どうしたら良いのでしょうか?
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4人なら4倍の分量計り、まず薄味で作ります。
1人分だけ(1/4量)取り分け、家族の分は、後から味を足して調理する方法があります。
 
ただし、タンパク質30g以下のような制限のときは、誤差をなくすためにも、1人分だけ計って別々に
作ることを薦めます。
 
 
 
外食をするとき、気をつけることは?
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1.外食の回数は極力少なくする
食事療法とは、毎日の積み重ねです。どんなに正確でも、それがたまに出来るというのでは意味が無くなってしまいます。
どうしても外食をする日は、1食ぐらいにして残り2食を家庭で調整できるようにします。
 
2.食材の分かるものを選ぶ
もともとタンパク質の多いメニューや塩辛いものは避けるようにします。
タンパク質がオーバーしないように取り分けて残しやすいものを選んだり、比較的計算しやすいものや単品で
頼むようにします。
 
例えば、カレーライスならお肉を少し残したり、パスタなら野菜系のものを頼んだり、定食なら味噌汁、
漬物は食べないようにします。
 
3.外食の栄養成分表を参考にする
一般的な外食の成分が載っている本があります。
 
・外食・市販食品のエネルギー・塩分・たんぱく質ガイドブック(女子栄養大出版)
・新外食テイクアウトのカロリーガイドブック(女子栄養大出版)
・市販食品成分表(女子栄養大出版)など
 
また、最近は店頭での成分表示がなくても、ホームページにて公開しているお店もあります。
 
4.普段から計ることの繰り返しが大切
普段から計るということを繰り返していると、おのずと食品の重さの見当がつくようになり、成分も覚えてきます。
目分量でどれをどの位食べられるのか分かれば、たまの外食も気にすることなく楽しめるのではないでしょうか。
 
普段からきちんと出来ていれば、たまに一食ぐらい好きなように食べても治療的には問題ありません。
自分へのご褒美とすることも出来ます。
 
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食事は、私たちが生きていくため必要な栄養素を摂る手段です。
食べ物は私たちが生きていくのに必要不可欠なものです。
しかし、生きるのに必要な栄養素をただ機械的に食べていれば元気に生きられるものなのでしょうか?
「おいしそう」とか「食べていて楽しい」と感じることも大切な栄養であり、潤いと活力を得ることで、
心と共に元気になれるのだと思います。
それは、食事制限があっても同じです。
 
我慢して食べるから治療になるのではありません。
制限を守ることが治療につながるのです。
少しでもおいしく楽しい時間にして食事療法を続けていきましょう。
 
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補足、改訂など
パソコン、栄養計算についての箇所の間違いを訂正しました。2008.2.14
私は栄養計算ソフトヘルシーダイエット3(東京書籍)を長く使っており、よく薦めていましたが、
残念ながら販売終了となったようです。
 
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